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アニメ版『ガンスリンガーガール』について……!! [マンガ原作&アニメ『ガンスリンガーガール』]
願わくば、吐き気と気分の悪さに堪えながらも、なぜか毎週見てしまうアニメのTVシリーズというのは、個人的にはこれが最初で、最後であって欲しいと切実に思います!
アニメ版『ガンスリンガーガール』、アニメ作品として出来は、絵や動きやセリフも含めて、実に良く出来ています。全13話のTVアニメ・シリーズとしては、間違いなく傑作の1つだと思います。
特にオープニングなどは、映画版『銀河鉄道999』や『幻魔大戦』で知られる、りんたろう氏が担当しています。恐らく、御本人は物語の本質を知らずに、お作りになったのだろうと、思います。ですが、実に見事な出来映えです。
文字通り、正義のために銃を取って戦う少女達という雰囲気が、ビンビン伝わって来ます。そして、最後に戦士の休息。そう、ちょうど下の絵のような感じです。
この作品の特筆すべき点は、まだ原作マンガが連載中でありながら、見事に13話で完結しているところにあります。
しかも、この物語の本質を余すところ無く、場合によっては原作マンガ以上の精神的残酷さと、政治はもちろん人間性や生命に対する皮肉を、描いているところです。もちろん残虐描写は、原作マンガ以上に規制の掛かる、TVアニメですから、マンガよりも描写が酷いと言うことはありません。それ以上に、ある意味演出が非情なのです。
★この先は当然内容に触れますし、あらゆる意味で少女をこよなく愛される方は、先を読む時は充分に注意して下さい★
既にマンガ原作のところで述べたように、主人公の少女達は皆洗脳され、過去の記憶を無くし、別の記憶を与えられた上に、人工的な肉体を与えられています。
原作マンガのところで、うっかり触れるのを忘れたのですが、この物語のもう1つの残酷さに、それら人工的な処置を維持するための薬物依存症があります。とにかく多量の、それも山のように副作用や問題のある薬を、常に必要としています。
彼女達は人工の体ですから、当然と言えば言えるのですが、成長しないことはもちろん、この多量の薬の副作用もあって、寿命が異常に短いのです。これを、社会福祉公社では、「消耗が早すぎるのも、問題だ。民生用に転換できないと、いけないからな」と言っています。あくまでも、モノ扱いです。
そしてそれ以外の症状としては、まず日常的に起こることが、条件付けられたこと以外の、記憶の欠落です。昨日のことも忘れてしまうことは、マンガ原作のところで触れた通りです。
それ以外の症状には、個体差があるようですが、ともかく条件付けを優先するために、それに反する行為や発言はできません。
というより、反する!ということを言ったりしたりするということが、基本的にはできないか、もしくは激しく肉体的負担を伴うということがあります。これらについての専門的な見解は「擬体は、まだ開発途中なんだ。これからは、少しずつ良くなって行くさ」とのことです。
これに対して、自分の担当する少女が壊れて行く様子を、見かねた担当官が、「先の、他の擬体の、話をしているんじゃない!この娘は、どうなるんだ!?」と詰問すると、専門家は冷酷に言い放ちます。
「貴重なサンプルを提供してくれたんだ、それでいいだろう?」もし擬体化しなければ、数日を経ずして死んでいた。それが対テロ組織のメンバーとして活躍し、さらには擬体の問題点を明らかにし、次への課題を残した。これほど、立派なことがあるか?
ある意味、正しくあるように聞こえますが、人体実験の偽善であることに、変わりはありません。ですがそれを公然と行うなうところ、それが「社会福祉公社」なのです。
既に述べたとおり、このアニメ作品は見事に13話で完結しています。
もちろん、原作マンガの方はまだまだ続くのですが、アニメ版は実にきれいに区切りを付けています。そして、その区切りの付け方が、マンガ原作とは全く逆のように思えるのです。
アニメ版は、ほとんど何も原作マンガの内容を、変えてはいません。変えたのは、物語の順番です。そして、その結果それは最終回に、この物語の持つ意味を、見事に大逆転してくれたと、個人的には思っています。
と同時に、このアニメ版は原作に描かれているにも関わらず、それほど強調されたとは思えない善悪の逆転。アンチ・テロリストと、本物のつまり信念を持ってテロを行う者との、皮肉な共通性を同じ描写でありながら、強調して見せます。
この物語には、当初からある意味で信念を持ち、テロの持つ意味と結果、それがどう評価されるかを承知の上で、それを行う1組の若い男女ペアの、テロリストを描いています。
男性の方は爆弾作りの天才ですが、彼には何の特筆すべき信念はないようです。ただ自分の存在意義は、爆弾作りにしかないと、自覚しているようにだけ見えます。
女性の方は、原作マンガでは父親を現政権に謀殺された事実が、見事に隠蔽され闇に葬られたことに、正当な手段での抗議を諦めて、テロ行為に手を染めている。と、ありますが、実はアニメはその物語が描かれる場面まで行かずに、終わってしまいます。
ですから、彼女達は現政権に対する抗議手段を、爆弾に託することに信念を持つ、1組の若い男女として、描かれています。
考えを同じくする者と手を組み、組織に入らなければ爆発物の材料1つ取っても、入手が難しいからか、彼女達はあるテロ組織に属しています。そのため、やる気のない、やる意義を感じないテロに使う、爆弾も作らざるを得ません。
ただ、そんな時に彼女は言い放ちます。
「爆弾は作るし、約束通り渡しもする。でも、その後のことは知らない」
そしてあるグループに頼まれて、爆弾を用意はしたけれど、全く気が乗らない時にはこう言って憚りません。
「ああいう馬鹿には(中略)偽物でも、くれてやればいいんだわ」
そして、受け渡しの時間と場所に行ってみると、既に主人公達によって、そのグループは壊滅させられようとしていました。
現場の、ただならぬ雰囲気を感じて、帰ろうとする彼女に、男が聞きます。
「いいのか?」
彼女は、平然と答えます。
「何で私達があの馬鹿のために、危険なマネをする必要があるの?むしろ、これで爆破されなくて良かったわ」
おいおい、彼女は本当にテロリストか?と、思う間もなく翌日、爆破されるはずの場所で彼女は、主人公の女の子の1人と、偶然人混みでぶつかります。
「大丈夫?」
「はいッ!」
平凡な会話の後、走り去る少女を見ながら、彼女は呟きます。
「バイオリンケースに、正しいイタリア語の発音。ああいう娘こそ、私達が守るべきものなのよ」
もちろんそのバイオリンケースには、女の子の手には大き過ぎる、マシンガンが入っているとも知らずに……。
この場合、テロリストとはどちらのことを、言うのでしょうか?
実は、これは知り合いからの指摘でもありますが、この作品は元の原作マンガから、かなり絵的な無理があります。
そもそも、少女の手には大きすぎる銃を持たせるため、不自然に手が長くなるか、不自然に銃が小さくなります。それも、最初から彼女達の体型に合わせて、小さく作ってあるなら納得もできますが、手渡す直前までは通常の大きさだったりします。
さらに、確かに擬体ですから、両手でマシンガンが撃てても、不自然ではありません。しかし意味もなく、直前に右手で撃っていた銃を、直後には左手で撃つというようなシーンが、特にマンガ原作にはよく登場します。
銃に詳しい方は御存じかと思いますが、概ね銃というモノは右利き様に作られています。もちろん、拳銃などは左手で撃つことも可能ですが、機構上左手で撃つことは不便です。マレに、どちらの手でも撃てたり、あるいは左利き用の銃というのもありますが、数も種類も圧倒的に少ないと思います。
結果的に言えば、このマンガ原作者は〈格好良ければいい〉のだと、思います。そして、女の子も可愛ければいい。銃も女の子も、同じ画面上の小道具に過ぎない。それが、このマンガ原作の、特徴だと思います。
そんなマンガ原作の在り方を、アニメ版は最終回で見事に覆します。
マンガ原作にもある、流星群の観測会。一度は無理かも知れないと言うところを、担当官の仕事の山、フランス語とドイツ語の膨大な資料を、イタリア語に翻訳する作業を女の子が手伝い、見事に終わらせます。
そして、見晴らしのいい場所で、流星が次々流れては消えるのに、感嘆の声を上げます。実はこの時、薬物の依存症が進み、数分前のことも忘れるようになった、末期の仲間に、ベートーベンの「第9」、いわゆる「歓喜の歌」を聞くように渡しています。
その娘が、病院の窓から星が流れるのを見て、その歌を聴く頃、観測会に出掛けた仲間達も、一斉にその「歓喜の歌」を歌い始めます。
そうです《喜び》の歌です。同時に、《希望》の歌でもあります。
TVアニメ・シリーズは、13話をかけてマンガ原作の《救われない話》を《喜びと希望》を抱かせる物語として、完結させたのです。このラスト・シーンは、本当に秀逸です。
原作はお薦めしませんが、アニメ版はお薦めです。
但し全13話を最後まで、見続ける自信のある方に、限ると思います。また長くなりましたが、今回はこの辺で失礼致します。
凌辱行為の名の下、あらゆる性愛表現が規制出来る事は、自明の理です。汗が唾液が体液が飛び散る、ドロドロ・ベタベタした表現はダメで、爽やかに心地良く何事もなかったかのような、表現のみが許されるとしたら、それらは作り手に「嘘を作れ!嫌ならその場面は作るな!!」と命じているのと同じです。
作り手の自由を縛る……これは、日本が世界に誇る文化と、一大輸出産業を死滅させる秒読みと、なるでしょう。












コメント投下失礼します!!
ガンスリンガーガールは漫画のほうで二巻まで買って、アニメの方も最初の数話辺りまでは見てたんですが、当時の私はあまり血や、こういったいろんな意味で残酷な話が苦手だったため、途中で見るのを止めてしまいました。
ですが、今回この記事を読ませていただいて、改めて読んでみようか、見てみようかと思い始めました。
by 草団子 (2007-07-06 09:02)
HINAKA先生!
見事な評論です!!!
またアニメ版を見たくなっちゃいましたぁー
まさに「希望なき者のために希望という言葉がある」
ヴァルター・ベンヤミンの名言を思い出しました!!!!
(多吉大チェンチェイの受け売りですが…)
by オクトーバー (2007-07-06 13:53)
HINAKAです。
草団子様
こちらには、初コメントの投下!ありがとうございます!!
いやもう、「読みたくなった、見たくなった」と言われると、紹介記事を書いた身としては、嬉しい限りです。
ただこの作品に限り、本文にも書きました通り、アニメ版は推奨いたします。何しろ早送りもできれば、音声を消すことだって、見ずに音だけ聞くことだって可能ですから!
ですが、マンガ原作は覚悟して下さいッ!
ここでコメントするのも何ですが、これほど美(たぶん)少女を主人公にしておいて、主人公に対する作者の愛情が感じられないマンガを、個人的にはこれ以外全く知りません!!酷いです……。
こちらへの書き込みは、御遠慮なく!
それでは、またのお越しをお待ちしております。
by HINAKA (2007-07-06 16:43)
HINAKAです。
オクトーバー様
アニメ版の13話によって、ある意味我々は救われたのだと、思います。
そうでなければ、重過ぎますこの原作の展開は……!
一番の問題は、これだけ重い色々なテーマをバラ撒きながら、作者には一向に収束しようという気配が、見えないことです!
個人的には、ブログとしての適量を、超えたのではないかと、ちょっと心配です。
それでは、また!
by HINAKA (2007-07-06 16:50)